愛犬が何度も体を掻いている様子を見ていると、こちらまでかゆくなってくるような、なんとも落ち着かない気持ちになるものです。心配と同時に、なすすべがないという無力感も感じるのではないでしょうか。特に、愛犬がなかなか楽になれない様子を見ているときはなおさらです。「どうしてこんなにかゆそうにしているんだろう?」と思うのも無理はありません。

そのような不安と無力感から、飼い主さんがかかりつけの獣医師のもとを訪れる理由のひとつが、「どうしてこんなに体を掻くのでしょうか?」という疑問です。

最重要ポイント

  • 何度も体を掻き続ける犬は、慢性的な湿疹やウルシかぶれに悩む人間と同じように、つらい不快感を抱えていることが多いです。
  • ひっきりなしに体を掻くのは、単なる痒みにとどまらないことがあります。何らかの健康上の問題が隠れているサインかもしれません。
  • 痒がる場所や掻くタイミングに注目すると、考えられる原因を絞り込む手がかりになります。
  • 体を掻くのはあくまでサインであり、特定の病気の診断ではありません。
  • 場合によっては、行動上の問題が原因のこともありますが、通常はほかの原因を除外した上で最後に検討される診断です。

ノミがいないのに体を掻くのはなぜ?

犬が痒がって体を掻いていると、まずノミを疑いたくなるものです。しかし、ノミがすぐに見つかるとは限りませんし、そもそもノミが原因ではないケースもあります。「ノミがいないのに、どうしてこんなに痒そうにしているの?」と首をかしげる飼い主さんも少なくないでしょう。

まず確認しておきたいのは、本当にノミがいないかどうかです。

🔎 ヒント:

ノミの問題を確認するために、大量のノミを見つける必要はありません。ノミアレルギー性皮膚炎を患う犬では、たった1匹のノミに噛まれただけで強いアレルギー反応が引き起こされることがあります。

ノミがいないにもかかわらず体を掻いている場合、考えられる皮膚の病気はさまざまです。アレルギー、皮膚感染症、ダニ、乾燥肌、さらには内科的な病気まで、幅広い原因が痒みを引き起こすことがあります。

掻いている場所、タイミング、季節性かどうか、ほかに皮膚の変化が見られるかどうかなどが、獣医師が原因を特定するための大切な手がかりになります。

皮膚アレルギーと食物アレルギーの違い

皮膚アレルギーと食物アレルギーを簡単に見分けたいところですが、残念ながらそう簡単にはいきません。環境中のアレルゲンによる皮膚アレルギーと、食べ物によるアレルギーは、現れる症状が非常によく似ています。ただし、多少の違いはあります。

一般的に、環境アレルギーによる皮膚症状は、春や秋など特定の季節に始まることが多く、外出後に痒みが悪化する傾向があります。そのため、時期によっては症状が落ち着いたり、特定のアレルゲンへの暴露が少ない環境に移ると改善したりすることもあります。

一方、食物アレルギーによる痒みは季節を問わず年中続くことが特徴のひとつです。そのため、与えている食事を見直すことが大切です。

🍽️ ヒント:

食物アレルギーを確実に診断する唯一の方法は、8〜12週間の除去食試験です。除去食期間中に痒みの程度が改善し、元の食事に戻した際に再び症状が現れれば、食物アレルギーと判断できます。

耳や顔を掻くのはなぜ?

耳を掻いている場合、アレルギーが主な原因として考えられます。犬の耳は神経が豊富に分布しているため、軽い炎症でも強い痒みや痛みとして感じやすいのです。

同様に、顔を掻く場合もアレルギーが強く疑われます。犬の顔には感覚神経が多く、皮膚が薄くてデリケートなため、アレルゲンにさらされやすい部位です。

耳も顔もひっきりなしに掻き続けている犬はとてもつらい思いをしていることでしょう。動物病院で働いていた頃、何日も、時には何週間も掻き続けた結果、耳や顔の周りが赤くただれた状態の犬をたくさん見てきました。

ノミアレルギーとホットスポット:どんな症状に注意すべきか

ノミアレルギーは犬に強い痒みを引き起こす最も一般的な原因のひとつで、場合によってはホットスポット(急性湿性皮膚炎)に発展することもあります。

ホットスポットは、繰り返し舐めたり噛んだり掻いたりすることで生じます。皮膚のバリア機能が損なわれると細菌が繁殖しやすくなり、炎症を起こして滲出液が出るような皮膚感染症(急性湿性皮膚炎)につながることがあります。

ノミアレルギーによって皮膚を掻いたり噛んだりしている場合は、適切な治療と経過観察が必要です。注意すべき症状は以下のとおりです。

  • 強い掻き、噛み、またはかじり。特に尾の付け根、お尻、太ももの辺り
  • 赤みのある炎症した皮膚
  • 脱毛または毛の断裂
  • 湿って滲出液が出ている皮膚(ホットスポット)
  • かさぶたや痂皮の形成
  • ノミの糞または目に見えるノミ
  • 持続的な痒みによる落ち着きのなさ

夜中や床を掻くのはなぜ?

夜になると体を掻く回数が増えると感じていませんか?気のせいではありませんよ。

🌙 ヒント:

夜になると体を掻く回数が増えるように見える犬が多いのは、家の中が静かになって気を紛らわせるものが減り、痒みに意識が向きやすくなるからです。

ただ、愛犬が自分の体を掻いているのか、床や周りの家具を掻いているのかを見極めることが大切です。

床を掻いたり地面を掘るような動きをしたりするのは、横になる前に巣作りをするという自然な行動のひとつです。毛布を整えて、安心して眠れる場所を作ろうとしているのかもしれません。また、床を掻く行動は不安や退屈のサイン、あるいは人の注意を引こうとする行動である場合もあります。

不安や退屈から来る引っ掻きはトレーニングで改善できます。愛犬についていくつか簡単な質問に答えるだけで、どこから始めればよいかがわかります。

家具を掻く場合は、外に出たいというサインだったり、欲求不満や不安を感じていたりすることが考えられます。痒みを和らげるために家具や壁に体をこすりつける犬もいます。

カーペットを掻くのはなぜ?

「どうしてカーペットを掻くのでしょう?」と尋ねられることがあります。この場合、掻く状況や文脈に注目することが大切です。

ときには文字どおり「表面の下を見てみる」ことが必要です。ラグをめくると、その下におやつやおもちゃが紛れ込んでいて、それが原因だったということもあります。

一方、眠る前に床を掻くのは巣作り行動の表れであることもあります。また、出産が近い雌犬や偽妊娠中の雌犬が、本能的な行動として床を掘ったり掻いたりすることもあります。

犬の乾燥肌による引っ掻き:原因と改善策

犬が痒がって体を掻く原因にはいくつか考えられるものがあり、多くは健康や環境に関係しています。中でも乾燥肌による引っ掻きは見過ごせません。冬場の室内暖房や刺激の強いシャンプーの使用は、皮膚の水分を奪い、皮膚の神経終末を刺激して痒みを引き起こすことがあります。

🔁 ヒント:

ひっきりなしに体を掻き続けると皮膚のバリア機能が傷つき、掻けば掻くほどさらに炎症と痒みが悪化するという「痒み→掻く→さらに痒み」のサイクルに陥ってしまいます。

幸い、乾燥肌による引っ掻きはいくつかの簡単な対策で改善できます。獣医皮膚科専門医のジョヤ・グリフィン先生によると、加湿器の使用、乾燥肌用のシャンプーとコンディショナーへの切り替え、毎日のサプリメントの摂取などが効果的だそうです。

「刺激を受けた皮膚のケアには、皮膚に栄養を与える外用薬が欠かせません。」
— ジョヤ・グリフィン獣医師(DVM, DACVD)

引っ掻きが行動上の問題になるとき

場合によっては、皮膚を掻いたり噛んだりする行動が、健康上の問題ではなく行動上の問題から来ていることがあります。ただし、これは内科的な原因をすべて除外した後に初めて検討される診断です。

本当に行動が原因の引っ掻きであれば、根本的な問題に取り組む犬のしつけトレーニングが必要になります。

たとえば、慢性的なストレスや不安、葛藤による引っ掻きには、ストレスの原因を特定し、生活環境を整え、陽性強化を通じて引っ掻き以外の代替行動を教えることが効果的です。症状が重い場合は、獣医師が薬を処方することもあります。

PawChampにできること

ドッグトレーナーとして、犬のしつけや行動の問題をひとりで抱え込むことがどれほど心細いか、よくわかります。でも安心してください。PawChampなら、引っ掻きの行動面へのアプローチを体系的にサポートします。

  • 引っ掻き、噛み、掘るといった行動に代わる行動を教えるためのステップバイステップのエクササイズ。
  • 進捗の記録機能で、引っ掻きが週ごとに改善しているかどうかを確認できます。獣医師への報告にも役立ちます。
  • 皮膚とは無関係な退屈や注意引き目的の引っ掻きに対応する、生活の充実や日課に関するアイデア。
  • 専門家に相談チャットでは、認定トレーナーがしつけに関するお悩みに答えます。

獣医師と一緒に健康上の問題を除外しても行動が改善しない場合は、PawChampで短い毎日のステップからトレーニングを始めてみましょう。

まとめ:

犬が体を掻く理由はさまざまで、根本的な原因を特定するのが簡単ではない場合もあります。痒がって体を掻いている犬には、迷わず獣医師に診てもらいましょう。痒みを抱える犬はとてもつらい思いをしており、放置すると皮膚の状態がさらに悪化することがあります。 皮膚の問題の多くは、何らかの健康上または環境上の原因によるものですが、場合によっては過剰な引っ掻きが行動上の障害から来ていることもあります。その場合は、内科的な問題を除外した後に初めて検討される診断となります。

参考文献